ところがそれほどに行きたかった屋久島だが、エンジンのかかりが非常に悪い。杠氏の訪島記を読むと、決行を逡巡する彼に私が止めを刺したと記してある。そのまま取れば迷う彼をその気にさせるほど筆者が熱く燃え上がっていたかのようだが、一部どうしても積極的になれないところがあった。それは上原氏から聞いていた軌道歩きの恐怖である。不幸にも訪島中にそれは現実のものとなるのだが、高所恐怖症から来る不安感はどうにもぬぐい去ることが出来ない。
 
 そんな後ろ向きな心持ちによるものかもしれないが、あろうことか鹿児島に向けて羽田を離陸する直前、生まれて初めて飛行機恐怖症にかかってしまった。とにかく抱いていた不安は尋常ではなかったのだ。
 それでも離陸してしまえば恐怖感はウソのように消え去ってしまい、鹿児島空港で高橋さんと落ち合う頃には落ち着きを取り戻していた。もともと難しいことをあれこれ考える頭など持ち合わせていないのだ。いささか強めのスパイスを絡み合わせながら、屋久島まで来た実感がここにきてようやくこみ上げてきたのだった。

 空港に着いたその足で荒川へ、そして待望の軌道を歩きはじめる。目標は今年新たに出来た作業線。
そして、そいつはやにわに姿を現した。